日本の森、モリのニッポン紀行

2020年12月6日からnote版「日本の森、モリのニッポン紀行」(https://note.com/samsil_life)に引っ越しました。

【出雲國】意宇郡・由貴神社

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大橋川沿いの松江市馬潟町に鎮座する由貴神社を訪ねたのはホーランエンヤの渡御祭の一週間前。
町内には「馬潟櫂伝馬」と書かれた幟が町内の至るところに立てられていた。
平日だったせいか祭を一週間後に控える緊迫感は感じられず、大橋川の流れのようにのんびりとした空気が流れていた。

松江での「プチ移住」生活を初めてまだ数日しかたっていないころ。
新聞やテレビの報道、そして町中に張られたポスターなどでホーランエンヤについて目や耳にする機会が日に日に増えていった。

幟に書かれているように馬潟町はホーランエンヤで櫂伝馬船を出すことができる「五大地」のひとつ。
神輿船が暴風雨で座礁しかけたのを馬潟の漁師が真っ先に出て助けたことから「いのいち馬潟」と呼ばれるようになった。
伝馬船の船体には「い一まかた」と書かれている。

由貴神社の入り口にFATBIKEをとめて鳥居をくぐり境内へ。
神社を守る狛犬の顔がコミカルで可愛らしい。
すぐ正面の拝殿まで15歩、まずは参拝。

拝殿に向かって左側にはツバキの木だろうか、根元に藁蛇が巻かれていて、胴体部分には串幣が差し込まれていた。
藁蛇は顔、歯、舌まで細かく作られておりクオリティーの高さがうかがえる。
やはりホーランエンヤの五大地のひとつだけあって、伝統を守ることに対しひとかたならぬものがあるようだ。

なおホーランエンヤつながりでいえば、城山稲荷神社の御神体が渡御する阿太加夜神社境内にまつられていた藁蛇も立派だった。
幹回りが太くそれ自体が恐竜の足のようなタブノキの根元近くを胴が巻き、鳥居状に立てられた竹を前に大きく口を開いている。
またタブノキの根元にはおびただしい数の串幣がさされている。

木も蛇もともにただならぬ雰囲気を醸し出している。
僕が出雲国で目にした多くの藁蛇のうち、自分が食べられそうになるくらいの恐怖感を感じたのはあとにも先にも阿太加夜神社の藁蛇だった。

写真は島根県松江市

 

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