日本の森、モリのニッポン紀行

2020年12月6日からnote版「日本の森、モリのニッポン紀行」(https://note.com/samsil_life)に引っ越しました。

【出雲國】意宇郡・勝日神社。

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勝日神社が鎮座する富田八幡宮にやって来た。
とても広い境内、と月並みな言葉しか思い浮かばない。

社名が刻まれた標柱が立ち道路に面した一の鳥居から、石段を上がり、長い長い参道を歩いて随神門をくぐる。
その先にある桧皮葺の建物に息を飲んだ。
いただいた略記によると、入母屋造の拝殿、流造の本殿、切破風の中殿の建物はすべて有形文化財として指定されている。
大社造が多いこの地方の神社建築のなかで流造の社殿は珍しい。

建物自体は1790年の火災後、広瀬藩の命により建てられたものだというが、創建自体は560年というから神社の境内を歩くと古社とはなんぞや、という問いに対する答えを教えられるような気がした。
拝殿までは460歩、まずは参拝。

古社感あふれる境内だが随神門のなかにとんでもない警告文が張り出されていた。

「熊情報あり 警戒して下さい 社務所

略記に「社有風致保安林共三万坪、参道は苔むした石畳が両脇の杉、欅の大樹に覆われ、神秘的な森厳さが保たれており」とあるように境内の森は深い。
熊が生息していても決しておかしくない自然環境であるが、警告文を読むと恐ろしくなってくる。
参拝に先立ち手水舍に立ち寄ると神社の関係者の方が掃除してみえたので声をかけた。

「私も実際見たわけではないのですが、五月の頭ころに出たという情報があったので張り出しておいたんですよ。イノシシは毎夜暴れてますがね」

勝日神社は本拝殿のある境内中心から向かって右手奥に鎮座する。
鎮座地のこの場所は勝日山と呼ばれていることからすると元々はここの主人だったようだ。
「古くは月山頂上の勝日高守神社の里宮として山腹に鎮座」と略記に書かれている通り、富田城があった月山は元々勝日山と呼ばれていたが、高守神社の里宮として当社を遷座した時点で勝日山という名も一緒に里へ降りたそうだ。

幸い、境内にいる間、クマの姿に遭遇することはなかった。
僕が松江で暮らしていた間だけでも、浜田市内でクマが目撃されただけでなく、ワナにかかったと報道されていた。
山にはクマのエサになるものがないので人里近くに降りてきているのかもしれない。
不幸な出会いがないことを祈るばかりだ。

写真は島根県安来市

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