日本の森、モリのニッポン紀行

2020年12月6日からnote版「日本の森、モリのニッポン紀行」(https://note.com/samsil_life)に引っ越しました。

【出雲國】意宇郡・市原神社。

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式内社という神社があるということを僕は四十歳を過ぎるまで知らなかった。
書店で偶然手にした岡谷公二氏の著作「神社の起源と古代朝鮮」という本をきっかけに、「延喜式」に掲載されている式内社と呼ばれる古社を巡ろうと決意した。

式内社が古社であることはいうまでもないが、延喜式編纂後千年以上たっている今日、式内社と考えられるすべての神社に「古社感」を求めるのは難しい。
千年もたっていれば変わっていることも多いはず。

式内社としてまつられる神社には歴史を感じさせる古社が多い一方、これが式内社なのかと思わせるような古社の雰囲気が感じられない神社もあるのが現実だ。
長い年月をへて大きくなる神社があるのも確かだが、歴史の流れのなかで忘れ去られる神社もあれば廃絶してしまう神社があったとしても不思議ではない。
だからこそ市原神社はよくぞ式内社の伝統を残してくれたと感謝したくなる神社である。
残念なのは鎮座する場所がとても分かりにくく、スマホGoogleマップを使っていなければ到達できた自信はないのだ。

揖夜神社の境外末社である市原神社。
集落内を走りながら神社がありそうな場所を探すがなかなか見つからない。
道路沿いをキョロキョロしながらぺダルを漕ぐ。
視界のはるか先には小高い丘が連なってはいるけど、神社らしい鬱蒼とした雰囲気の森はない。
いつしかスマホに落とし込んだ場所を過ぎてしまっていた。

上がった道を下り始めスマホを確認。
画面に示された現在地を見るとかなり近い。
そして現在地と神社の場所が重なったとき、道路端の奥に小さな道を見つけた。

FATBIKEを立てかけて小道をたどって行くと、その先に小さな社が鎮座していた。
扁額に「式内市原神社」とある。
まずは参拝。
賽銭箱には「一の原組一同」と書かれていた。
「一の原」=「市原」なのだろう。

広い境内に大きく古い社殿があるというわけではない。
そこにあるのは式内社という古社の記憶を形に表した神社である。

千年以上の歴史を持つといわれる神社とはいっても、必ずしも大きな神社とは限らない。

写真は島根県松江市

 

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