日本の森、モリのニッポン紀行

2020年12月6日からnote版「日本の森、モリのニッポン紀行」(https://note.com/samsil_life)に引っ越しました。

【出雲國】嶋根郡・布自伎美神社。

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出雲國の式内社の大部分は山上など山に関係する場所に鎮座する...

これは僕が実際に各神社を回った感想である。
出雲地方にはお隣、伯耆国にそびえる大山級の標高の高い山はないけど、島根県全体の地図を見る限り平野部よりも山地・丘陵地が圧倒的に多い。

だからそもそも変速機のついていないFATBIKEで回ろうと思うこと自体が無謀なんだけど、その無謀なことをやってしまったいまでは本当によくやった、と自分を褒めてやっている。
おかげで四十五歳でもやろうと思えばできることは多い、という自信感につながったのだから。

意宇郡の神社の次は嶋根郡の神社を見ていこう。
延喜式」で同郡十四座の初めに記されている布自伎美神社。
標高326mの嵩山の山頂近くに鎮座する山上の神社である。
松江駅近くの逗留先を出て島根半島東端に向けてペダルを漕いだ。
半島先端に鎮座する美保神社から境港と大根島を経由して布自伎美神社が鎮座する嵩山の登山口に到着したのは午後三時だった。

美保神社までの道のりは海岸沿いとはいっても対岸の境港のように平たんではなく、小さなアップダウンの繰り返し。
でも海に目を移すと太陽に照らされて海面がキラキラ光っている。
ペダルを漕ぐことに必死になると周りの風景を見る余裕がなくなる。
だから時折、FATBIKEから降りては美保湾や中海を眺めた。

五月初旬の松江は湿度が低くからっとしていた。
嵩山の登り口には竹の棒が数本立てかけてあったので一本借りて登ることに。
途中、下山するふた組のひとたちに挨拶しながらただ黙々と上り坂に歩みを進めた。
木々の隙間から見える風景から標高が高くなっていることを知った。

登り口からスタートして二十五分。
前方に鳥居を見つけ、山頂に近づくとそれまで登りだった道は平たんになった。
鳥居から拝殿まで222歩。

参拝の前に切れ気味の息を整えるため展望台に向かい驚いた。
なんという光景だろう。
当日走ったルートである島根半島と境港をつなぐ境水道大橋、半島と大根島をつなぐ江島大橋のすべてがミニチュアの如く眼下に広がっていた。
まさにここまで頑張ったご褒美である。

ベンチに腰掛けてこのままずっと眺めていたい衝動に駆られるも、残念ながら予定上は次に向かう神社もある(結局、疲れのため断念)。
再び拝殿に向かい手を合わせたあと、後方の本殿に回り込んで観察。
本殿は流造で、少し高い位置に末社が二社まつられていた。

式内社調査報告」によると祭神は素戔嗚尊の御子である都留支日子命。
嵩山にはかつて松江藩主自身も登拝したことがあるそうだ。
また明治期の神社合祀令で同じく嶋根郡の式内社である門江神社も当社に合祀された。

登山というのは足だけで登っているように思えるが全身運動であることを学んだのは翌日。
体全体が筋肉痛になっていた。

松江での生活がスタートし神社を回るのは三日目。
始まったばかりの生活にテンションは高く「十勤一休」を平気で公言していたものの、この日を境に「三勤一休」に変更を余儀なくされた。

先は長い、無理は禁物だと...

写真は島根県松江市

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