日本の森、モリのニッポン紀行

2020年12月6日からnote版「日本の森、モリのニッポン紀行」(https://note.com/samsil_life)に引っ越しました。

【出雲國】嶋根郡・加賀神社。

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松江の風光明媚な観光スポットである「加賀の潜戸
潜戸鼻と呼ばれる岬の先端近くの海上に旧潜戸と新潜戸という洞窟状の穴が空いている。

出雲国風土記」にも記されていることから古代出雲の人々にも神秘的な感動を与えたことだろう。
嶋根郡の条には加賀の潜戸についてこう記されている。

「加賀の神埼。即ち窟有り。高さ一十丈許、周り五百二歩許。東と西と北に通る」
(萩原千鶴訳/加賀の神埼。ここに岩窟がある。高さ十丈[29.7メートル]、周り五百二歩[893メートル]ほど。東と西と北とに貫通している)

風土記を記述するにあたりだれかが直接出向いて調査を行ったと思われる。
加賀の潜戸に限らず「出雲国風土記」は国内の名勝なども詳細に記述している。
出雲国風土記」の取材・編集に携わった先人たちの熱意に尊敬の念を抱かずにはおられない。

ちなみに「加賀の潜戸」は出雲国四大社のひとつ佐陀神社の祭神である佐陀大神が生まれた場所でもある。
潜戸のなかには鳥居が立っており、そこには佐陀大神の母神で神魂命の御子である枳佐加比売命がまつられている。
と、見てきたようなことばかり書いているが、実際、潜戸への観光船が出航する「マリンプラザしまね」まで行きはしたものの、潜戸遊覧船に乗ったわけではなく、パンフレットの受け売りである。

そもそもこの辺りは坂がきつい。
本当にきつい。
変速機がついていない我がFATBIKE。
最初座ってペダルを漕いでいたが斜度がきつくなると立ち漕ぎし、そのうち立ち漕ぎが無理になるとFATBIKEから降りて押すことに。
自転車、とくにスポーツサイクルといわれる部類の自転車で押し歩きをするのはスタイル的にどうよ、って感じがするが、漕げないんだから仕方ないし、選手でもないんだから楽しみ優先でいいではないかと開き直ればよいのだ。

マリンパークしまね近くの漁港から潜戸のある辺りを眺めて写真を撮ってから、向かったのは加賀神社。
神社のある加賀までは二つの長いトンネルと下り坂を抜ける。
松江市の島根支所をはじめ学校など公共施設が集中し、加賀神社も小中学校と並んで鎮座している。
メーンストリートを走っているとすぐに鳥居を見つけることができた。

しかしである。
鳥居をくぐると正面の拝殿には足場が組まれ工事用の幕ですっぽりと覆われていた。
屋根の上ではトンテンカンとやっている。
タイミング悪く改築工事の真っ最中であった。お参りはできるようだったので拝殿の前まで進み手を合わせた。
鳥居から40歩の距離。

祭神の枳佐加比売命は先述の通り佐陀大神の母神であり、また兄弟神に殺された大己貴命を妹とともに救った赤貝の神でもある。
かつて当社は「潜戸大明神」とも呼ばれていたという。
神話が語られる前から潜戸のような神秘的な自然の造形物に対する信仰があったに違いない。
それが潜戸内の神社になり、利便性から里宮的存在として当社が創建されたのだと思う。

写真は島根県松江市

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