日本の森、モリのニッポン紀行

2020年12月6日からnote版「日本の森、モリのニッポン紀行」(https://note.com/samsil_life)に引っ越しました。

【出雲國】嶋根郡・爾佐神社。

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嶋根郡の神社を回った当日の朝は雨が降っていた。
松江に来て初めての雨。
しかしその雨は長引くことはなく、朝のうち少し地面を濡らした程度だった。

通勤通学時間を過ぎると上がったので、休みを返上して急きょ出かけることにしたのは多気神社の項で話した通りである。
松江駅近くの逗留先を出て多気、久良彌、河上の各神社をへて日本海側に出た。

目的の爾佐神社を目指し、海沿いの道を走って峠までやって来ると海が望める場所にベンチが設置された公園があった。
時間はちょうどお昼。
アルコールストーブに火をつけて味噌汁用のお湯を沸かしていたら小雨が降ってきた。
もう降らないものと思い込んでいただけに「マジで」という気持ちだったけど、峠の公園にはベンチだけでなく東屋もあったので場所を移動。
少々蒸し暑かったものの、インスタントの味噌汁に手製のおにぎりという松江暮らしを通してスタンダードになった昼食とともに小雨降る日本海の眺めを楽しんだ。

雨が上がったころを見計らって峠を下りると千酌の集落まではあっという間だった。
千酌湾に向かって開けた場所に集落が広がり、神社は湾口の中心辺りに鎮座していた。

入口の鳥居をくぐり随神門をへて正面に建つ拝殿までは30歩、まずは参拝。
境内を歩いてみるが、大社造の本殿や摂社の姿はどこの神社もだいたい似ている。
本殿向かって右手の奥には木の鳥居が立てられている場所があった。
藁蛇や幣串のようなシンボル的なものは見当たらなかったが荒神さんだろう。

式内社調査報告」によると境内の一部には磐境の名残があり、北西の部分に首塚とも大古塚とも呼ばれる古墳があると書かれている。
古社巡礼とともにご当地の古墳巡りを楽しみにしている割にはまったく気づかなかった。

また他の神社境内で見られない珍しいものとして神馬像があった。
首にはしめ縄が巻かれており、足の付け根の筋肉がたくましい。
神馬と当社の祭神・都久豆美命には関係があり、都久豆美命は天照大神の弟神、月夜見命なのだという(「出雲国式社考」)。
神社が鎮座する地名の「チクミ」と祭神の「ツクツミ」、そして同神とされる「ツキヨミ」も言葉の響きが何となく似ている。
その月夜見命、「伊勢大神延暦儀式帳」に「月読命御形馬上乗男形」とある点が神祭日に馬を飾ることとつながるのだそうだ。
ちなみに「萬指出帳」(宝暦十四年)には四月三日の大例祭で「鬼門堅メ之神㕝、帯・甲冑・騎馬ヲ立テ執行」とあるように鬼門堅メ、即ち流鏑馬が行われていたことが記されている。

僕が神社を訪ねた時点での流鏑馬をやっているかどうかは分からなかったけど、「式内社調査報告」が執筆された当時には行われていた、と原宏氏は報告している。

写真は島根県松江市

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