日本の森、モリのニッポン紀行

2020年12月6日からnote版「日本の森、モリのニッポン紀行」(https://note.com/samsil_life)に引っ越しました。

【出雲國】出雲郡・阿須伎神社。

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赤レンガ風の屋根に白壁。
島根ワイナリー瀟洒な建物を右手に見ながら国道431号線を走っていくと左手に「阿須伎神社参道」と書かれた案内が立っていた。
その標に導かれて緩い上り坂を上がっていくと参道と薄暗い森の境に鳥居が立っている。
鳥居をくぐり拝殿まで95歩、まずは参拝。

深い木々に覆われていている境内には強い陽射しを遮り柔らかい光だけが地上に降り注いでいた。
国道から離れていることもあり静かで、境内にいると深い森に抱かれているようでとても落ち着く気がした。

しかしその森に感じる落ち着きとは裏腹に当社は不思議な神社でもある。
というのも「延喜式」を見ると阿須伎神社の次には「同社」を冠した神社がいくつも並んでいる。
すべて挙げると次の通りだ。

同社神韓国伊太氐神社
同社天若日子神社
同社須佐哀神社
同社神魂意保刀自神社
同社神阿須伎神社
同社神伊佐那伎神社
同社神阿麻能比奈等理神社
同社神伊佐我神社
同社阿庭須伎神社
同社天若日子神社の十社。

すべて社名に「同社」を冠しているし、同社天若日子神社に関しては同名の神社が二つ存在する。

社名に「同社」や「同社坐」を冠する神社は出雲国独特であることはこれまでもほかの郡でも見てきたから特別不思議というわけではない。
だけど、こと出雲郡に限っては意宇郡以上に多く、さらに杵築大社に付随すると考えられる「同社」が七社であるのに対し、阿須伎神社には杵築大社以上の十社が属すと考えられている。

一方、「出雲国風土記」にも神祇官社として阿受伎の社以降、「阿受枳の社」「同じき阿受枳の社」「同じき社」をまとめるとやはり十社を数え、非神祇官社二十八社を含めると全三十九社。
そもそも「阿受伎の社」と「阿受枳の社」は一字違うし、「同じき阿受枳の社」は何と比べて「同じき」なんだろう。
すべて阿須伎神社に属する摂社と考えていいものだろうか。
そんな感じがするのだけど、阿須伎神社自体も出雲大社の境外摂社のひとつとくれば、余計に訳がわからなくなる。

式内社調査報告」にも触れられているように、これだけ多くの「同社」を持つ当社はもともとは杵築大社とは別に独立した神社であったと考える方が自然かもしれない。

現在では「同社」系神社はすべて合祀されている。
境内を歩いていると、知っている木だけでもタブノキケヤキ、スギ、ヒノキ、ツバキなどが社叢を構成していた。

写真は島根県出雲市

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