日本の森、モリのニッポン紀行

2020年12月6日からnote版「日本の森、モリのニッポン紀行」(https://note.com/samsil_life)に引っ越しました。

【出雲國】楯縫郡・玖潭神社。

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松江市内での逗留先から古社巡礼に出かけるとき、宍道湖の南側に鎮座する神社を訪ねるときはJRに、同じく北側の場合は一畑電車に乗って出かけたものだ。


JRにFATBIKEを載せる場合は輪行が必須である。
マンションを出て高架沿いを東に向かうとすぐに駅なので、バスロータリー角のコンビニ前のベンチを利用してFATBIKEを分解・輪行バッグに袋詰めしていた。
いちいち分解するのは面倒だけど、この作業に慣れてしまうと時間をかけずにこなすことができる。
最初は一時間かけても袋詰めできず電車を逃してしまうこともあった。
でも最近はその時間が十五分まで縮まった。
輪行はやればやるほどその技術が上がるものと実感した。

一方、一畑電車には地方ローカル鉄道によくある「サイクルトレイン」が可能である。
自転車をのままの状態で車内に載せることができる制度だ。
鉄道会社によって運賃とは別に持ち込み料が必要なところ不要なところがあり、また載せられる路線も全区間のところもあれば一定区間の場合がある。
一畑電車の場合、持ち込み料が一回310百円必要だが全区間OKなので嬉しい。
しかも五枚綴り一冊1000円のお得な回数券もあるので、買わない手はない。

一畑電車で毎度利用していたのは松江しんじ湖温泉駅発午前六時二十六分の始発電車。
余裕を持って逗留先を早めに出発し宍道湖大橋を渡る。
すると小舟から身を乗り出し長い棒で湖底を掻くシジミ漁の漁師さんたちの姿が朝日に照らされていた。
町が動き出す前にすでに漁は始まっている。
橋の真ん中でペダルを止めて松江大橋に向かってシャッターを切った。
夕日で有名な宍道湖
でも神社通いで朝一番の電車に乗るため宍道湖大橋を渡っていたそのときの僕には、宍道湖を照らす朝日こそが美しかった。
その風景が記憶に鮮明に残っており、いまこうして文章を書いていても懐かしく思い出される。

駅で改札を受け車両なかほどのスペースにFATBIKEを立てかけ、ゴム紐で手すりに固定する。
万が一倒れることがないようフレームに手を添えながら、左窓から見える宍道湖の眺めを楽しんだ。
そして宍道湖が視界から消え、一畑口駅スイッチバックを過ぎると雲州平田駅に到着する。
輪行していないので自転車そのままの姿で走り出す。

平地にある駅周辺を過ぎしばらく走ると山塊に行き着いた。
当日訪ねた楯縫郡の神社には山麓に食い込んだ谷の奥に鎮座するケースがあり、玖潭神社もそのひとつである。
しかし道路状況は過酷でFATBIKEを電車にそのまま載せて楽をした分、アップダウンが続く道に悪戦苦闘することになった。

だらだらした登り坂を越えてようやく下り坂に差しかかったとき、左手に鳥居ではない注連縄を吊した柱を見つけた。
ここだここだ、とFATBIKEから降りて境内に入ろうとすると目の前に黒っぽいヘビがひなたぼっこしていた。
砂を踏む足音にサッと排水溝のなかに逃げていった。

僕が入った場所は神社の裏口なので、いったん正面に向かう。
鳥居をくぐり石段を上がって拝殿まで77歩、まずは参拝。
階段の途中に荒神さんがまつられていた。
丘陵地中腹辺りの豊かな社叢を持つ境内にひとの姿はなくひっそりとしていたが、拝殿に吊された大注連縄の陰に隠れて防犯カメラが監視の目を光らせていた。
純粋に参拝に来ている自分までが監視の対象にされるなんて腹立たしい一方、カメラを設置しなくてはいけないくらい深刻な被害が出ているのだろう。
そう思うと山深い里まで賽銭を盗みにやって来る輩は本当に罪深い。

写真は島根県出雲市

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