日本の森、モリのニッポン紀行

2020年12月6日からnote版「日本の森、モリのニッポン紀行」(https://note.com/samsil_life)に引っ越しました。

【出雲國】出雲郡・都武自神社。

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この日、松江からFATBIKEごと一畑電車に載せて旅伏駅にやって来た。

都武自神社の場所をグーグルマップで事前に調べたところ駅近くに出ていた。
こりゃ幸い、と早速その場所に向かったのはいいが、駅の北側にあるとされる神社はどこにも見当たらない。
一帯を回ってみるが早朝に住宅街をウロウロするのも怪まれてしまう。
花の手入れをしていたおばさんに声をかけて尋ねると、「ここに神社なんてありませんよ」とそっけない返事。
近くの神社を教えてもらったものの都武自神社ではなかった。

「おいおい、どこだよ」
グーグルマップで都武自神社の場所を再度検索すると神社は自分の目の前に広がるなだらかな山の山頂。
十一社を回る予定の一発目にいきなり登山である。
自分の調べ方の悪さに思わずため息。
そうはいっても行かずにはおられない。
麓までやって来ているからどこかに登山口があるはずだ。

何人かのひとに尋ね、最後に尋ねたおじいさんにはメモ帳に地図まで書いてもらって康国寺という目印のお寺に隣接した駐車場にたどり着いた。
FATBIKEをとめ、自販機でミネラルウォーターを買い八時四十五分、登山口を出発した。
登山道は整備されていたけど、最初の数分は傾斜がきつく何度も立ち止まった。
朝一なので体力は十分とはいえ四十路にはかなりこたえる。
勾配がなだらかになったところでギアを切り替えハイペースで登っていくと登り始めから二十分後、木製の傾いた一の鳥居をくぐった。
そして二の鳥居が見えたところで神社が近いことを感じ、三の鳥居をくぐり後方の石段を上がると大注連縄を吊るした拝殿に出た。
手元の時計は九時十五分。
三十分で登ったことになる。
焦りから必死の形相で登っていたことだろう。
朝早かったことが幸いし、だれにもその顔を見られずに済んだ。

まずは無事に登って来られたことを感謝し手を合わせる。
境内は木々に覆われて日差しを遮っており、枝の間を通り抜ける風が汗をかいた体に心地よい。

旅伏山は「旅」という文字が入るだけに旅に関係する言い伝えがあり、出雲の国土を大きくした八束水臣津野命は志羅紀の御崎が余っていると知り引っ張ってくるが、その志羅紀からの帰りに旅伏山で休息されたとか。

また旅中安全の守護神として尊崇され、松江藩では江戸勤番の際、「家中に至るまで必ず守札を受けて旅行するのが例であつた」(「式内社調査報告」)という。

祭神の速都武自和気命はつむじ(飄)という言葉からも分かるように風の神で、意宇郡・筑陽神社と嶋根郡・久良彌神社のそれぞれ次に「同社坐波夜都武自和気神社」としても列挙されている。
出雲国では重要な神であったようだ。

写真は島根県出雲市

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