日本の森、モリのニッポン紀行

2020年12月6日からnote版「日本の森、モリのニッポン紀行」(https://note.com/samsil_life)に引っ越しました。

【出雲國】出雲郡・因佐神社。

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因佐神社を訪ねたこの日、石見との国境に近い田義駅から旅を始めた。

JR出雲市駅で一両だけの小さな車両に乗り換えると、すでに車内は通学の高校生で満員状態。
申し訳ない思いでFATBIKEを詰め込んだ大きな輪行バッグを車内に載せた。
幸い高校生たちは次の駅で降りていったので車内は一気にがら空きとなった。
束の間、ローカル線の旅。

田義からは予定していた神社を訪ねながら日本海を東にペダルを漕いでいく。
風が強く吹くものの快晴だったので休憩がてら浜に降りてみることにした。
視界一面に太陽を反射してキラキラ光る砂浜が広がり...
といいたいところだが、そこには行き場を失ったゴミたちが打ち捨てられていた。
ペットボトルを拾ってみるとラベルにはハングル文字がプリントされていた。
中国語やベトナム語とみられるもの、もちろん日本のものもあるが圧倒的に韓国からの漂流物が多い。
ペットボトル、燃料ケース、漁で使う浮き、とにかく多種多様。
マッコルリの緑のボトルを見たとき、鬱陵島を旅した二十年前を思い出した。

遊覧船を待つため波止場でボケッと座っていたとき、目の前を波に揺られながら緑色のボトルが漂っていた。
口が細く真ん中がくびれて下半身が太った形、これどこかで見たような。
僕のすぐ前でラベルが上を向いたとき、カタカナで「ママレモン」と書かれていた。
鬱陵島出雲国の北、隠岐の島の北西側に位置する。
朝鮮半島から文物が伝えられるときの経路として地理的に近い慶尚南道から北九州が真っ先に浮かぶが、これだけ多くのモノが島根の浜に打ち上げられ、また鬱陵島での一件からして、相互をつなぐ海の道があったことがゴミのおかげで視覚化されたようだ。
出雲も決して朝鮮半島から遠い場所ではないことを実感した。
もちろん海洋ゴミ、特にプラスティックゴミがこれだけ多く漂うということは環境問題としてとても深刻ではあるが。

さて、海岸沿いを走り稲佐の浜に到着した。
ここは「国譲り神話」の舞台である。
その稲佐の浜から因佐神社は近い。
民家が建ち並ぶ細い道を走っていくと鳥居が見えてきたが、ポツンと建っているというのが第一印象である。

鳥居をくぐり本殿まで65歩、まずは参拝。
案内によると祭神は建御雷神。
「国譲り神話」とは大国主命が治める地上を天つ神に譲渡するもので、日本書紀古事記ともに神代記に掲載される話だ。
そこで重要な役割を果たしたのが建御雷神で、彼の脅しが通用したことが国譲りにつながった。
神話という物語上、譲ったことになっているけど、実際には出雲の征服につながる大規模な戦闘があったかもしれない。

出雲側から見たとき、建御雷神とは仇以外の何者でもないはずだ。
神話になっているくらい大昔の話だからと僕は思うけど、出雲人たちはそう思っていないのかもしれない。
出雲という完全にアウェイの土地に神としてまつられているのは出雲人の寛容さとは別に、国譲りの悔しさをいまも忘れず記憶しておくためかもしれない。

写真は島根県出雲市

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